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大阪高等裁判所 昭和52年(ネ)1801号 判決 1978年10月17日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  求める裁判

(一)  控訴人

原判決中控訴人敗訴部分を取消す。

被控訴人らの請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

(二)  被控訴人ら

主文と同旨。

第二  当事者双方の陳述、証拠の関係は、次に記載する外、原判決の記載を引用する。

(一)  控訴人の陳述

本件のダンプカーは、本件事故当時他車両等に牽引されなければ場所的な移動ができない状態にあつたから、運行の状態にはなく、本件事故は明らかにブルドーザーが誤つて後退したため発生した事故であつて、ダンプカーの運行との間には因果関係がない。

原判決の理論は、本件で、ダンプカーのみ自賠責保険がつけられていたためか、ダンプカーのみを中心に考えたもので、不法行為の理論を混乱させ、自賠責保険実務をも混乱させるものである。

大津がブルドーザーのチエンジレバーを後進のままにしておいたという原判決の事実認定は、証拠からみて誤つている。

原判決の補助道具論は、何ら法的根拠のない立論である。高畑はブルドーザーの運転者であるが、ダンプカーの操従行為に何ら参与していないから、ダンプカーの運転補助者でないことは明らかである。本件事故は専らブルドーザー運転手高畑の過失によるものである。

仮に、補助道具論を承認するならば、本件と同一の状態にあるブルドーザーが前進し、前方にいた人間をひいた場合でも、ブルドーザーの走行がダンプカーの運行と同一視される以上、ダンプカーに運行供用者責任が成立することになる。これが不当な結論であることは、いう迄もない。

原判決は、弁護士費用の請求を認容しているが、本件は、自賠法一六条に基く請求であつて、加害者に対する損害賠償請求ではないのみでなく、控訴人の応訴は事案からみて十分理由があり、不当応訴、不当抗争ではないから、弁護士費用の請求は認められるべきでない。

また、原判決は、弁護士費用を除く認容部分につき、年六分の商事法定利率による遅延損害金を認容している。しかし、被控訴人らの請求は、自賠法一六条の被害者請求であつて、保険金請求ではない。右一六条が保険契約の当事者でない被害者に直接請求権を認めたのは、被害者保護のため、法が特に政策的に認めたものである(自賠法一四条ないし一六条、七六条等参照)。また、右被害者請求は被害者の加害者に対する損害賠償請求に外ならないものである。

よつて、自賠法一六条請求である本件について、商事法定利率が適用される根拠はない。

(二)  被控訴人らの陳述

本件事故当時、ダンプカーが運行状態にあつたことは、原判決理由第二項が正しく理解しているとおりである。

本件事故は、牽引車と被牽引車がワイヤーで連縦されて、至近距離(約一・五米)にあり、しかも、両車両は共同して被牽引車(ダンプ)を凹地から脱出させることを目的として、運行(両車とも発進)状態に入り、誤つて牽引車が被牽引車に衝突の結果発生したものであるから、これら一連の現象を一体として観察すると、本件事故は、被牽引車(ダンプ)が運行中に牽引車と衝突した事故と解されるのであり、両車両を一体として法律的に観察すべきである。被牽引車(ダンプ)が存在(但し運行中)しなければ、本件事故は発生しなかつたことに注目すべきである。

照正は、本件車両に対し運行支配も利益もないから、自賠法第三条の他人に該当する。

大津は、ブルドーザーを後退させながら、その位置に停止させたのであり、特にレバーを前進に戻した立証のない限り、レバーは後退のままとなつていたものと推認される。そもそも、自賠法第三条の賠償責任を免れるためには、自動車保有者に於て、逆に無過失の立証を要する。

およそ保険制度は公共性を有するものである。ことに自賠責保険は高度の公共性を有する。控訴人の支払拒絶は純然たる営利主義に基くもので、事業の公共性を忘却したものである。控訴人は保険業者として専門家であり、本件支払拒絶は悪意に基く不当抗争である。控訴人が、保険金の支払を拒絶したことは違法であることが明かとなつた。それが微妙な法律問題を含むとしても、支払拒否は、結局に於て、控訴人の判断の誤りで、それは、少くとも過失である。被控訴人らが訴訟代理人を選任したのは、その違法を是正させるためであつたから、そのために要した費用は、控訴人が負担するのが当然である。

控訴人は商人であり、自賠法一六条一項に基く支払は、商法五〇二条九号又は五〇三条により商行為であるから、同法三条、五一四条により商事法定利率によるべきである。損害金の請求は、自賠法に基くものではなく、債務不履行による損害賠償の請求である。

理由

次に記載する外、原判決の理由を引用する。

原判決一〇枚目表七行目に「八ツカ」とあるのを、「ハツカ」と訂正する。

原判決一四枚目裏八行目に「二、六四三、五〇〇」とあるのを、「二、六三四、五〇〇」と訂正する。

本件事故の態様、事実関係は、原判決理由に示すとおりであり、ブルドーザーが後退してダンプカーの前部に衝突し、鉄棒を手で握つていた白石照正がダンプカーに胸部を押し付けるような姿勢で、胸・背部を右両車にはさみつけられて強打されたため、受傷して死亡したのであるから、照正は、ダンプカー運行に因つて傷害を受け死亡したものということができる。右認定、判断に反する控訴人の主張は、いずれも採用しない。

次に弁護士費用について判断する。本件は、自賠法第一六条第一項による請求であり、同法第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したことは、その請求原因の要件の一部でありかつ、本件での重要な争点として控訴人が争つているところであるから、控訴人に対する弁護士費用(これも本件交通事故と相当因果関係がある)の請求を認めるのが相当であり、これについての原審の認定、判断は相当である。(控訴人も、被害者請求は被害者の加害者に対する損害賠償請求に外ならないものである旨陳述している。)

また、保険会社(株式会社)である控訴人に対する自賠責保険金額限度内での損害賠償支払請求について、訴状送還の日の翌日からの遅延損害金に年六分の商事法定利率を適用した原審の判断も相当である。

以上の認定、判断に反する当事者双方の主張は、いずれも採用しない。

よつて、原判決は相当で、本件控訴は、その理由がないからこれを棄却し、民訴法第八九条、第九五条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 山田義康 岡部重信 藤井一男)

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